エコノミークラス症候群 ~地震の避難所でもかかりえる

 

 エコノミークラス症候群は、飛行機、とりわけ座席の狭いエコノミークラス席で発病する確率が高いとされるもので、下肢や上肢その他の静脈に血栓(血のかたまり)が生じる疾患です。長時間同じ体勢でいることが問題であるとされており、2004年の新潟県中越地震で車中避難生活を送る人たちの中にエコノミークラス症候群の疑いで死亡するケースが報告されています。その後の調査により、避難の形態に関係なく生ずることが指摘されており、本震や余震およびライフラインの被害をはじめとした過渡のストレスや、脱水などによる血液濃縮での血栓形成が危険性を高めるとされています。避難生活においては以下のことに注意をする必要があります。

 

エコノミークラス症候群の予防

 

●水分を適度にとりましょう  水分の確保ができないため脱水傾向になったり、トイレを控えようと飲水を我慢したりすると、血液が濃縮して血栓ができやすくなります。 ●手足を伸ばした生活をしましょう 窮屈な姿勢を長時間とっていると、避難所でも血栓ができやすくなります。やむを得ず窮屈な姿勢でいなければならないときでも、適度に運動をしましょう。歩くことができれば理想です。 ●ふくらはぎを揉むなど、適度にマッサージをしましょう  適度なマッサージは血行をよくし、血栓形成予防に効果があります。 (注意) 血栓性静脈炎(筋肉痛、圧痛、皮膚の腫れ、静脈の腫れ、熱、皮膚の紫色変色など)が見られる場合は、安易にマッサージや運動をすると血栓が飛びやすいため、よくない場合があります。血栓性静脈炎のような症状が出現したときは医療関係者に相談をして指示をお受け下さい。こんな時はストッキングをはくように言われたり、医療機関受診をすすめられることがあります。

[解説] 高崎健康福祉大学保健医療学部教授 医学博士 田中聡一